今年初めて富士ヒルに挑戦する方へ!
毎年多くのサイクリストを熱狂させるイベントが Mt.富士ヒルクライムです。
ロードバイクを始めたばかりの人からシリアスレーサーまで、幅広い層のサイクリストの目標になっているイベントです。
SNSでは毎年多くの方が完走後に”ちゃんとのぼり切れた!”、”ブロンズを取れた!”、”シルバーギリギリ届かなかった!”、”入賞した!”
などなどの嬉しい報告から悔しい報告まで、熱い思いを感じ取れる投稿がたくさん目に入ります。
そうした投稿を見てきて”今年は富士ヒルに出てみようかな”と思っている方へ、今回は”富士ヒルに向けたトレーニングの進め方”をご紹介します!
どうせ挑戦するなら、できる限り体を作って臨みたいところです。
ぜひ最後まで読んで、挑戦に繋げてください!
富士ヒル特有の”リング制度”
富士ヒルは毎年1万人近いサイクリストが参加する国内最大のイベントです。
これだけたくさんのサイクリストを熱狂させる大きな理由が”リング”の存在です。
完走したタイムに応じた色のリングがあり、皆それぞれ目標のリング獲得にむけて努力します。
リングとタイムはそれぞれ
ブルー 時間内完走
ブロンズ 1時間30分未満での完走
シルバー 1時間15分未満での完走
ゴールド 1時間5分未満での完走
プラチナ 1時間0分未満での完走
また、女性の完走者には別途ピンクリングが贈呈されます。
注意すべきなのは、基準タイム未満であるという点です。
1時間30分ちょうどではブロンズリングは取れません!ここは注意です。
ブロンズリングを取れる人は上位30%とされており周りの仲間からも一丁前認定されるため、ここを目標にする方が非常に多いです。
ちなみに2023年実績で、シルバーリングで上位10%、ゴールドリングで上位2%、プラチナはわずか0.1%でした。
https://past.fujihc.jp/2023/info/resultsokuho/
みなさまはどこを目標にしますか?
目標の設定のためにはまず現状把握から
適切な目標を設定するには自分の現在地を知る必要があります。
ここでは自分の脚力を図る目安をいくつかお伝えします。
FTPテストをして脚力を測る
FTPはFunctional Threthold Power の頭文字を取ったものです。1時間維持できる最大のパワーのことを言い、ヒルクライムの能力を測る指標になります。
なお、概算されたFTPを必ずしも1時間維持できるわけではないので、注意が必要です。だいたい30分から1時間維持できるパワーくらいに捉えてください。
パワーメーターを使用している方の場合はこれを行うのが一番確実です。
①20分平均パワーより算出
ウォーミングアップ5分
⇨5分間全力
⇨10分レスト
⇨20分間全力
この20分平均パワーの95%をFTPとする
②RAMP test
おおよその推定FTPの50%からスタート
⇨1分ごとに10Wずつ上げる
限界まであげた最後の1分の平均パワーの75%をFTPとする
※必ずシッティングで最後までやること。ダンシングでパワーを誤魔化そうとしない。
引用:https://activike.com/2021/09/02/ftp_up_training_roadbike/
これ算出された値を体重で割るとパワーウェイトレシオ(PWR)が算出されます。
この値とリングの色を対応させると大まかに
3.2倍=ブロンズ
4.2倍=シルバー
5.0倍=ゴールド
と言われています。プラチナは個人差が大きくてよく分かりません。笑
当日にこの値を出すというわけではありません。
それは以下の2つの理由からです。
①そもそもFTPは最大で1時間維持出来るギリギリのパワー(1時間維持出来ない場合も多い)。本番のレース時間は1時間を超えるので、FTPを維持したらオーバーペースになる。
②コースである富士スバルラインは標高1000m~2200mまで至る高地の道であるため、酸素が薄く出力を出しにくい。(およそ10%程度出力が下がると言われている。)
よって上記はあくまで脚力の目安であり、当日のパワーの基準ではないということは注意です。
上記のパワーが出せる、またはそれに近しい値が出せれば、目標とする価値ありです。
Stravaで脚力を把握する
ここ数年で一気に普及率が伸びたパワーメーターですが、それでも高価で導入ハードルが高いのは変わりません。
パワーメーターがない場合、どう脚力を把握するか?ですが、ここではStravaの活用をお勧めします。
具体的には、”Stravaのセグメントのランキングを使って自分の立ち位置を把握する”という方法です。
各地域に1つは人気の峠セグメントがあると思います。そこを全力でアタックしてタイムを測るとランキングで自分の順位がわかります。
できれば、最低でも3kmくらいの峠道を選んでください。
そこのランキング内で自分が上位何%かをチェックし、それを上のリング別の上位%に当てはめてみましょう。
大体の立ち位置が分かります。
セグメントを走った人数は地域によってだいぶ差があるので、そこはご注意を。
なお、パワーメーターを使わないでどうトレーニングするか?は以下で紹介しています。
https://activike.com/2021/09/07/powermetorless_training/
目標と現状のギャップを埋める意識でトレーニングをする
現状把握と目標設定ができたら、あとはそのギャップを埋めるためにトレーニングをするのみです。
しかし、
そもそもどれくらいの量をやらなければいけないのか?
何をやればいいのか?
がわからない方がほとんどかと思います。
そこで、以降はトレーニング量とトレーニングメニューの1例を紹介します。
大体どれくらいのトレーニングを積むと良いか?
みなさん気になるのはどれくらいのトレーニングをすると良いか?ということかと思います。
トレーニング量と聞いたときに多くの人は”距離”を目標にしがちです。
しかし自転車のトレーニングにおいて、実は距離は当てになりません。なぜなら住んでいる地域の地形や交通状況(信号の数や交通量)、コース、気候、路面など、様々な要因で1時間あたりに進む距離は変わるからです。
特に最近はZwiftに代表されるバーチャルサイクリングツールによって、距離を単純に比較することはできなくなっています。
距離がダメなら何?となりますよね。
答えは”時間”です。
体に負荷をかけた”時間”を練習量として捉えましょう。
これなら脚力に関係なく練習量を比較・管理しやすくなります。
※本音を言うと、パワーメーターを使っている方は総仕事量(k J)を見てほしいです。
ヒルクライムに向けてFTP向上のためのトレーニングを行う場合は1週間あたり最低でも7時間かつ週4回はトレーニングをして欲しいところです。
自転車の脚力をつける=有酸素運動の能力を高めると言うことになります。このためには継続的にトレーニングをする必要があります。
週に1回長い距離を走る、だけでは脚力は上がっていきません。1回のボリュームよりも頻度が重要です。
毎回のトレーニングには回復時間が必要なので、それを加味して1日おきにトレーニングするとしてもやはり週4回はトレーニングが必要でしょう。
そして、毎回の練習時間も最低の最低で30分、できれば最低で1時間は確保したいところです。
この時間は一気に1時間と言うことではなく、朝と夜に分割した合計でも構いません。
仕事のある日に2回1時間、休みの日に2~3時間ずつ乗る、と言うリズムが多くの人にとって現実的でしょうか。
一方で乗れば乗るほど良いということでもありません。なぜなら多くの時間を乗ればそれだけ多くの回復時間が必要になるため、強度の高い大事なトレーニングが行いにくくなります。
特にヒルクライムに絞るなら練習の強度が高いため、週に15時間も乗れば十分過ぎるくらいかと思います。
まとめると、最低7時間/週〜最大15時間/週あたりが現実的かと思います。
日常の中にトレーニングが入ると生活にもメリハリがつきます。脚力向上に限らず日常生活においてもさまざまなメリットが得られますので、ぜひこの機会に生活リズムを整えてみましょう。
おすすめのトレーニングメニュー
ヒルクライムのためのトレーニングのおすすめメニューを紹介します。
なお、人により必要なトレーニングや強度には個人差があると言うことと、FTPはあくまでトレーニングの基準の1つでしかないと言うことをご留意ください。
トレーニングの進捗に合わせてメニューを修正してくれるコーチをつけることをお勧めします。
①SST(Sweet Spot Training)
ヒルクライムに重要な、”きつい強度に長く耐える能力”を身につけるトレーニングです。
専門用語で言うと乳酸を処理し続けて強度の高い有酸素運動を継続する能力を高めるトレーニングになります。
強度 FTPの85~95%
様式 7分SSTを2分レストを挟みつつ合計40分を目指して反復する/20分SSTを10分レストを挟んで2~3セット/連続30分以上、など
時間 1回の練習あたり合計して最低30分、できれば1時間
②VO2maxショートインターバル
ヒルクライムの後半、キツくなってきた時の粘りやラストスパートに繋げるトレーニングです。
有酸素運動能力の最大領域の向上を目的としています。
慣れてきたら30秒/20秒、30秒/15秒のようにレストの時間を短くしてみるか、40秒/20秒のようにONの時間を伸ばしてみましょう。
強度 5分間維持できる最大出力(以下5min.max)
様式 30秒5min.max/30秒レスト(50%5min.max)×10本×2~3セット
時間 合計して5min.maxを10分以上20分未満
③FTPインターバル
ダイレクトにFTP領域を刺激して登坂力を上げるトレーニングです。
強度 95%FTP~105%FTPを目安に
様式 10分FTPを5分の10分のレストを挟みつつ3~6本(きつかったら7分から始めてみる)
時間 合計して最低30分
④ベーストレーニング
ヒルクライムのようなきつい強度のトレーニングをこなすために、それより低い強度のトレーニングを行い”土台”を作ることも必要です。
追い込むばかりがトレーニングではないのです。
きついトレーニングをやるための土台を作るのがベーストレーニングです。
強度 FTPの60~80%の範囲で
様式 一定ペースでできる限り長く走る
時間 30分以上、できる限り長く。
①~③を週1回ずつ行い、他の日に④をできる限りやる、という流れは継続しやすいかと思います。
※あくまで一例であり、効果を保証するものではありません。トレーニングは強度と時間の変化を少しずつ付けて、継続的に体に負荷をかけるように工夫しましょう。