ACTIVIKEと走るレーサー#4 高杉知彰選手(イナーメ信濃山形)
この冬のトレーニングツールとして活用する人の多いZwift。
日本国内でも数いる強豪Zwifterとして必ず名前が上がるのが高杉知彰選手(イナーメ信濃山形)であろう。
2019年のZwift National Championshipのチャンピオンであり、2022年のUCI cyclig Esports世界選手権にも出場、アジア人で2位、全体39位に入った選手である。
社会人レーサーながら2022年のJプロツアー(実業団レースのプロカテゴリー)では、赤城山ヒルクライム16位、かすみがうらロードレース15位と上位で完走もしている。
そんな高杉選手もまた、ACTIVIKEと走るレーサーである。
(ご本業である食品開発のノウハウを活かして、ACTIVIKE製品の開発初期にもご協力いただきました。)
今回は高杉選手に、Zwiftを活用した冬場のトレーニングの進め方や、ACTIVIKEアイテムを無駄なく活用する方法、日々のトレーニングでの栄養管理など、多くのホビーレーサーにとって学びの深い話をお聞きできたので、ここに紹介する。
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冬のトレーニングの進め方
A この冬のトレーニングについてなのですが、もうシーズンインを見据えたトレーニングをされている状況でしょうか?
高 3ヶ月くらいしっかり乗ってからシーズンインをしたいというのがあるので、この冬は12月の頭からプログラム立ててトレーニングをしています。ベースの時期、強度を上げる時期と分けて考えています。
A トレーニング内容は全て高杉さんご自身が考えてらっしゃるんですか?
高 もともとアメリカで選手活動をしていた時にPEAKS COACHINGがスポンサーで付いていてその時に1年丸々メニューを貰っていたので、それをベースに考えています。日々の細かい内容は自分で考えていますね。
A マクロサイクルの部分はPEAKSの内容で進んでいるんですね。
高 当時からさらに、ポラライズドトレーニングだったり新しい考え方が出てきていたりするので、要所要所で取り入れてはいます。でも基本は伝統的な考え方に基づいていますね。最近だと話題の”LSD”とかもですね。
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A 高杉さんの思う”LSD”ってどれくらいの強度感なんでしょうか?
高 これは”S”の部分が”Slow”なのか”Speed”なのか”Steady”なのか、解釈が分かれるところだと思うのですが、やはりL2からL3の強度は特に重要だと思っています。UAEのマクナルティがブエルタ明けの2ヶ月ぶりのトレーニングでL2のボリュームがとても多かったという投稿が話題になりましたよね。また国内のトッププロの一人の小林海選手はL3が多いと聞いたことがあります。こうした情報を踏まえて、やはりL2とL3は重視しています。
ただ、アメリカの元プロ選手などがやるLSDは”Speed”重視で、かなり強度も高く速かったです。こうした内容も冬は適度に取り入れてはいます。
A どれも0にはせず、バランス良くということですよね。
高 このうち、L3の時間をどれだけ伸ばせるかが大事かなと思っています。なのでこの冬にやりたいのは、L2のボリュームを増やすことから始めて、そこで終わらせずL3の時間も増やしていくということですね。こうして作ったベースにさらに高強度を乗せれば、かなり強くなるんじゃないかと思っています。
A L2から始めて、自然とL3に乗る時間が増えたらトレーニングがうまく進んでいるという解釈ですよね。
高 まさにそうです。去年はシーズン中もL2の時間を取りつつ高強度をやるポラライズドトレーニングをやっていたんですけど、今年はそこにL3を加えないと一歩進めないのかなと考えています。
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Zwiftの活用方法
A 冬のそうしたトレーニングは比率はローラー(Zwift)が多くなるのでしょうか?
高 多いですね。横浜に住んでいるので、どこに行くにも信号ストップが多くなってしまいますし、距離も伸びてしまいます。淡々と長い時間低強度で走るならローラーの方が効率良いです。
A ここは東京神奈川埼玉のような都市部に住んでいる方は避けて通れない問題ですよね。
高 ですね。こういう地理的な要因もあって、ベース期とか関係なく1年中ローラーが多くなります。シーズンに入ると週末は土日ともに実走になりますが、今は土曜までローラーで日曜実走ですね。最近だと、毎週土曜日にやっているMARKENがいい練習になっていますね。
A あれはかなりキツそうですよね(笑)
高 ええ、かなり(笑)平日は基本的にL2〜L3でローラーで、週に2回はZwiftレースと土曜日のMARKENで強度を上げます。もがく日は週に2回ですね。土曜日のMARKENの内容によって変わります。MARKENが短時間高強度な内容であれば平日は上げてもSST、逆に淡々と長時間のレースであれば平日に短時間高強度のレースをやるように調整します。
A Zwiftレースでメニューを入れている人は珍しい印象です。
高 Zwiftは結構うまいことコースが組まれているので、ちゃんと考えてレースを選べばメニューのように取り組めます。適切なレースを選べば狙った強度のトレーニングができるんですよね。コースをほぼ全て把握しているからこそというのもあります。
A シーズンに入るとどう変わるんですか?オフでも週2回あげるとなると、シーズン中はさらに増えるのでしょうか?
高 滞留時間が変わりますが、頻度は変わらないです。そのときそのときで目標にしているレースに合わせて、平日に選ぶZwiftレースを変えています。
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例えば10月にあった霞ヶ浦ロードレースに向けてのスケジュールは、7月の古殿ロードレース(福島)が終わってから1週間ほどプチオフ期間を設けてから、冬から春にかけてと同じようにベースから積み上げ直しました。8月は冬と同じくベースの強度(L2〜L3)中心で、9月からレースを意識した強度のトレーニング(Zwiftレース)に取り組む流れでしたね。9月は赤城山HCがあったので、FTP付近の強度を叩くために向けて20~40分の登りの含まれるレースを選びました。そこでベースを固めて、10月の霞ヶ浦ロードレースに向けてはVO2max〜無酸素領域の反復ができるようなレースを選びます。
A やはり目標レースに合わせてという感じなんですね。練習時間はどれくらいになりますか?
高 ベース期(シーズンイン直前の時期)は月80時間くらい(週20時間くらい)になりますね。実走の距離が1300~1500kmくらいです。大事なレースの前はもっと増えます。先ほど上げた霞ヶ浦ロードレースとかツールドおきなわの前とか、あとは去年のEスポーツ世界選手権の前とかは月に100時間くらい乗っていました。
A フルタイムの仕事をしながらこのボリュームは凄まじいですね…。朝と夜に乗っている形でしょうか?
高 火水木の朝と夜にローラーで練習をしています。朝は5:30か6:00くらいに乗り始めて低強度で一定ペースで、夜は17:00の終業後にZwiftレースなどでトレーニングですね。フルリモートで仕事できているので、トレーニングもしやすいです。
A 平日にローラーでのトレーニング、土日に実走でロングライドと、多くの方に共通するやり方で進められていますよね。トレーニングの進め方に悩んでいる方に基本を教えるとしたら、どう伝えますか?やはり時間をいかに作り出せるかというところが鍵になりそうです。
高 自分の場合はフルリモートであることでかなり助かっていますが、実際には通勤があったり家庭の事情があったりと、時間の捻出をまずしっかり行うことが一歩めですよね。そこは各々マネジメントした上で、できる限りL2~3のようなベースの強度のボリュームをしっかり積み上げることが大切になると思います。その上で、高強度のインターバルも週2程度取り組むと良いのかなと思います。まずはしっかりボリュームを上げることですね。
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練習ボリュームを上げるための栄養管理にサプリメントを
A 練習のボリュームを上げるためには、その分しっかり食べないといけませんよね。週20〜25時間ともなると、食事量は相当なものになりそうです。どれくらいのカロリーを摂取していますか?
高 そうですね。朝練でも1500kcalほどになるし夜練も1000kcalほどになるので、基礎代謝も考慮すると日に4000kcalくらいは必要になりますよね。ただ、自分は胃腸がそんなに強くないので、朝ごはんはそんなに食べられないんですよね。練習中もあまり食べないです。そこでACTIVIKEのアイテムはかなり重宝しています。
A 固形物を多く食べられないんですね。意外でした。
高 基本的な3食は食べますがプラスして固形物を多く食べられないので、練習後のリカバリープロテインを活用してカロリーを補填する形です。朝練と夜練の後は必ず1杯飲んでいます。これで220kcal×2摂れますよね。昼食後には他社の通常のプロテイン(糖質が含まれていないもの)も飲んでいます。
A 練習中は何を飲まれていますか?
高 朝練の時は他社の脂肪燃焼系のものを飲んでいます。夜練の時はACTIVIKEスピードウォーターを飲んでいます。
A あれを夜に飲んでも寝られるんですね! ※スピードウォーターにはカフェインが含まれている。
高 疲れて寝てしまいます(笑)火曜にZwiftレースをやることが多いのですが、その時に使いますね。土日の練習はグランフォンドウォーターをボトル2本に入れて使いますね。ジップロックにグランフォンドとスピードウォーターを入れて、補給をしながらメニューを行なっています。以前は練習の終盤にレッドブルを飲んだりしていましたが、その手間がなくなっている形ですね。
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A ちなみにZwiftレースでちゃんと成績を狙う時にはどのように活用していますか?
高 レースの30分前にパワーニュートリションを入れています。中盤以降のキツい展開に耐えるためですね。レース中はグランフォンドウォーターが中心で、終盤にスピードウォーターを使いますね。リアルレースと大きく変わらないです。
A フル活用してくださっていて嬉しいです。Zwiftレース以外の普段のローラーでのL2~L3のトレーニングではどのように使っていますか?
高 今の時期は長時間のレースを見据えて空腹状態でいかにL2~L3で回せるかに焦点を当てているため、水だけにしています。ミトコンドリアの活性を脂質代謝を高めるためですね。
A 水だけでこなせるのがすごいです(笑)
高 長距離のレースを見据えると欠かせない能力なので(笑)ただシーズンが始まったら、よりレースを見据えた特有の練習の質を高めなければいけないですよね。そうなると、他の練習で変に疲れてしまってはもったいないので、どの練習でも基本的にはグランフォンドウォーターを使ってエネルギーを補給し、消耗を抑えることになると思います。今年は特にL3の領域が増えるので、その辺はマネジメントしないといけないです。
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練習中の栄養補給は必須
A Zwiftでの練習でスピードウォーターを活用することの効果は感じられますか?
高 カフェインが入っていますし、毎回ちゃんと質の高い練習ができていると感じますね。今の時期に質の高い練習をやっておけば春先に調子が上がっていくことも経験則としてわかっているので、その土台を作るためにも練習でのスピードウォーターの活用は必須と捉えています。
A 結構ローラーでのトレーニングだとスポーツドリンクを飲まずに水だけで済ます人は多いですが、どうお考えですか?
高 え、、飲まない人がいるんですか?
A 周りの話を聞くとほとんどみんな水ですね。
高 トレーニングで必要な栄養素をしっかり摂らないと練習の質が落ちますし、水で済ますというのはありえないですね。
A 外を走ることのプライオリティが高かったり、室内で時間が短いということもあり、補給への意識は外ほど強くない人が多いと思っています。でも練習の質を上げるためには、必要な栄養を摂らないといけないですよね。
高 外とか中とか関係なく練習は練習なので、スポーツドリンクを飲まないのはありえないです。そうしないと回復も遅くなりますしね。必要な栄養はしっかり摂りましょう。
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多くの人が勘違いしていること
A 空腹状態で低強度のトレーニングをして脂質代謝を高めることについて少しお話がしたいです。これは一時本でも取り上げられてブームにもなりましたよね。ただ、個人的には2時間以内のレース(JBCFのE1以下、ヒルクライム、クリテリウムなど)を主戦場にする人には必要ないかなと考えているのですが、どうお考えですか?
高 目標とするレースによると思いますね。おっしゃるように2時間以内の短いレースなら脂質代謝能力の高さはそこまで求められないと思います。例えばヒルクライムとか1時間しっかり踏み切れればいいので。ただ、JPTやニセコ/おきなわ(140km以上)のレースを見据えるなら、必要な能力だと思います。
A ですよね。ただ、実際にはそうした視点を持たずに”強い人がやっているから”取り組んでいる人も多い印象があります。
高 そこはもう情報の取り方、リテラシーの問題ですよね。実際には皆それぞれ目指すレースの時間が違っていたりするので、大事なことは目標レースの特性を見極めて逆算してトレーニングを選択することなのかなと。
A 自転車のレースって幅広い分野があるので、”強い人”と一括りにできないですよね。皆それぞれ違う形式のレースで結果を出しているわけで。だからある人を真似しようとした時に、その人がどういうレースを目標にしてどんな目的でそのトレーニングを行っているかまで考えないといけないと思うんです。
高 ここは伝えたいところですね。
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リカバリープロテインの裏技
A ちなみに自分の場合、スピードウォーターはカフェインがガツンと効いてしまって寝られなくなってしまうので、SST以上のことをやる時にはグランフォンドウォーターを使っています。あとは、練習”前”にリカバリープロテインを使っていますね。
高 あ、そういえば私も週末のロング練習の前の朝ごはんにリカバリープロテインを追加しています。リカバリーとしてだけでなく、栄養補給としてもありですよね。タンパク質と糖質が入っているので。
A 消化負担も少ないし、良いと思っています。そういえば、リカバリープロテイン+Bの方はどのように使い分けていますか?
高 ビーツ自体元々パウダーを買って使っていたのですが、+Bを頂いてからは週2回の高強度練習の後に飲むようにしています。”頑張った日用”という位置付けですね。あとは朝ごはんにスムージーを作るときに入れていますね。消化器の負担を減らして睡眠時の回復を促進させるために、午前中は固形物を摂らないようにする期間を設けたりするのですが、そういう時のスムージーにリカバリープロテインは使っています。固形物は避ける一方で必要なカロリーは摂らないといけないので。バナナとブルーベリーのスムージーにココア味を入れると最強に美味いんですよ(笑)
A 消化にエネルギーを使うというところ、結構見落としがちですよね。バナナとブルーベリーにココア味を混ぜる発想が浮かぶあたり、高杉さんですね(笑)
高 職業病が出てしまいました(笑)リカバリープロテインを活用したレシピはたくさんストックがあるので、今度お伝えします(笑)
A ありがたいです!!
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ヒルクライマー向け!この時期の練習の進め方
A 高杉さんの場合はJPTのレースやツールド沖縄のような長距離のレースがメインになるため、練習のボリュームや質は多くのヒルクライム思考の方や実業団のE1~3カテゴリーの方ともまた変わってきますよね。特にフジヒルが人気な昨今で、目指している方に何かアドバイスはありますか?
高 FTPをあげるという意味ではいずれにしても大きくは変わらないと思います。今の時期ならやはりL2~L3を中心に有酸素のベースを作ることが大事ですよね。あとは6月に出したい出力を週2程度、少しずつ体にかけはじめていく形でしょうか。そして本番が近づくにつれて、FTPより高い領域を体にかけて調子を上げていくのが良いのではないかと。
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パワーニュートリションのここがすごい!
A 高杉さんはこの1年くらいはかなりパワーニュートリションを愛用してくださっていますよね。実際に効果は感じられますか?
高 感じますね!繰り返し力=インターバル耐性が上がりました。レース2週間前に行っている定番のインターバルトレーニング(2000kj消費後の15秒ダッシュ反復からのvo2maxを維持するインターバル)ではっきりと変わりましたね。具体的にいうと、パワーニュートリションを飲んでなかった春先の群馬ロードレースの前は6回までしか繰り返すことができなかったんですが、夏に頂いて1ヶ月ほど飲んで霞ヶ浦ロードレースに臨んだ時はその出力を8回行えるようになりしましたね。一発の最大出力は試していないので分からないんですが、少なくとも繰り返しVO2max以上の強度で踏む能力はすごく上がります。
A (開発者の)僕が言っても説得力がないところなので、高杉さんにそのように言ってもらえると嬉しいです。
高 ただ、”ちゃんと練習すれば上がる”ということは伝えたいです。飲むだけでは強くならないですね。
A 飲むことでより高い負荷を叩く練習をする体ができて、その練習を繰り返すことで強くなるということですよね。
高 そうですね、ちゃんと考えて練習していれば、飲んでいるか飲んでいないかで1ヶ月後の成果に差が出ると思います。
今年の目標
A 今年もツールドおきなわは出られますか?
高 まだ迷っていますね。全日本選手権の開催場所がまだ出ていないので、それ次第ですね。全日本選手権を一番良いレースにしたいので。あとはJPTでいうと、霞ヶ浦ロードレースが一番コースの相性が良いので、意識したいところです。ちゃんと合わせればシングルリザルトも狙えると踏んでいます。ただ霞ヶ浦を狙うなら、タイミング的にツールドおきなわには調子を合わせられないんですよね。2022年は霞ヶ浦に合わせて体作ればおきなわもなんとかなるだろうと踏んでいたんですが、結果的には思うようにいかなかったんですよね。どっちも楽しいレースではあったんですけど。
A 1分のPWRが高いという高杉さんの脚質的にも、霞ヶ浦の方が狙いやすいですよね。
高 あとイナーメの今年加入のメンバーがかなり濃くて、既存の北野さん、松井さん、加藤くんはもちろん、小出選手や島野選手などメンバー全員が強いので、JPTのレースもかなり楽しくなりそうなんですよね。だからJPTに集中しようかなと。ただ、おきなわはおきなわで特別でもあるので、まだ決めきれていないです。ACTIVIKEさんからどちらに絞って欲しいとか要望があれば、対応しますが(笑)
A 選手の皆さんがやりたいようにやってくれるのが一番です(笑)
高 今年もサポートのほどよろしくお願いします!
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