【TSSの管理ーーロードバイクトレーニングで知っておきたい「質と量」のバランス】
TSSはトレーニングの「負荷」を数値化する便利な指標ですが、高ければ高いほど良いとは限りません。
目的や状況に応じて、適切なTSS管理が重要です。
目次
1.そもそもTSSとは?
TSS(Training Stress Score)は、パワーメーターや心拍計を使ったトレーニングで頻繁に用いられる指標で、トレーニングの「量」と「強度」をひとつの数字にまとめたものです。
TSSは、以下の計算式で求められます。
TSS = (運動時間 × 強度係数² × 100) / 1時間
ここで使われる「強度係数(IF)」は、FTP(Functional Threshold Power:機能的作業閾値)に対する実際の運動強度の比率を表します。
例えばFTPの90%で1時間走れば、TSSは約81になります。
2.目安となるTSSの例
・1時間の軽いLSD 40〜60
・SST(Sweet Spot Training)1時間 80〜90
・ヒルクライム全力1時間 100前後
・ロングライド5時間 250〜400
3.TSSが高いほど「良いトレーニング」なのか?
結論から言えば、必ずしもそうではありません。
理由①
・回復力とのバランスが重要だから
TSSは「負荷」を表しますが、人間の身体は負荷と回復のバランスで成長します。
いくら高いTSSを積み重ねても、回復が間に合わなければ疲労が蓄積し、オーバートレーニングやケガのリスクが高まります。
特に40代以降のホビーレーサーでは、若い頃と比べて回復力が低下しがちです。
無理に高TSSを目指すのではなく、回復できる範囲内でTSSを管理することが大切です。
理由②
・高TSS=質が高いわけではないから
例えば、LSD(Long Slow Distance)を6時間行えばTSSは300を超えますが、VO2maxやスプリント能力の向上には直結しません。
目的によって最適なTSSの稼ぎ方は異なります。
持久力強化 → 長時間LSDで高TSS
FTP向上 → SSTやLTインターバルで中程度TSS
無酸素パワー強化 → 高強度短時間で低〜中TSS
単にTSSを積み上げるのではなく、「何の能力を伸ばしたいのか?」を考えて負荷を設計することが重要です。
理由③
・TSSは万能ではないから
TSSは便利ですが、一部の疲労は反映されにくいという欠点もあります。
・筋肉・関節のダメージ
・睡眠不足や仕事のストレス
・暑熱順化不足
たとえば、酷暑のヒルクライムイベントでのTSSは150でも、実際は全身疲労困憊…という経験は多くのサイクリストが持っているはずです。
主観的疲労度(RPE)や睡眠状況と合わせてTSSを見るのがベターです。
4.TSS活用のベストプラクティス
① 年齢・生活状況を考慮する
40代以降、仕事・家事・育児との両立がある中で、高TSSは現実的でないことも。
週400〜600TSSでも十分伸びることが多いです。
② ピリオダイゼーション(周期化)を意識する
常に高TSSを求めるのではなく、「高負荷週 → 回復週」のリズムを作ることが、持続的な成長につながります。
③ 主観的疲労度と組み合わせる
TSSだけでなく、「昨日の練習の疲れが残っていないか?」を毎日観察しましょう。
日記やトレーニングログにRPE(主観的運動強度)を記録すると役立ちます。
④ 目的別にTSSを考える
ロングイベント:高TSS耐性を作る
ヒルクライム:FTP向上に集中
クリテリウム:無酸素領域も強化
5.まとめ
TSSは「高ければ良い」ではなく「適切であること」が大事
TSSは便利な指標ですが、高TSS=良い練習とは限りません。
自分の年齢・体力・目的に合わせたTSS管理が、長く楽しく強く走るためのコツです。
数字に惑わされず、質と量のバランスを考えながら賢くTSSを活用していきましょう!
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