【”糖質の種類”は気にしてますか?】
ロードバイクで長時間走るとき、糖質補給はもはや常識。
でも、「補給する糖質の“種類”」まで意識している人は意外と少ないかもしれません。
糖質とひと口に言っても、実はその種類ごとに体内での吸収スピードや経路、使われ方に違いがあります。
そしてそれが、補給のタイミングや量、ライド中のパフォーマンスに直結します。
今回はサイクリストが知っておきたい糖の種類と、それぞれの補給タイミングについて、わかりやすく紹介していきます!
目次
1.ざっくり知っておきたい糖質4つのタイプ
①グルコース(ブドウ糖)
体の基本的なエネルギー源。
小腸でSGLT1という輸送体を使って吸収されます。
吸収上限はだいたい1時間あたり60g程度。
一般的なエナジージェルやスポーツドリンクに多く含まれています。
②パラチノース
砂糖の一種で、消化が遅く血糖値の急上昇を抑える特徴があります。
こちらは1時間あたり約10から20gが目安。
ライド前、序盤、中盤まではパラチノースを使うのがおすすめです。
③フルクトース(果糖)
果物や蜂蜜に多く含まれる糖。
腸でGLUT5という別の輸送体を使って吸収されます。
こちらは1時間あたり約30gが目安。
グルコースと同時に摂取することで、全体の吸収量を増やすことができます。
④マルトデキストリン
グルコースが鎖のように連なった構造の多糖類で、消化・吸収されるとグルコースになります。
消化がスムーズで、エネルギー供給も安定するため、スポーツドリンク(スピードウォーターなど)や補給ジェルに頻繁に使われています。
2.吸収ルートの違いが“補給戦略”を変える
グルコースとフルクトースは、別々のルートで体内に入っていきます。
つまり、この2種類を組み合わせて摂れば、一度により多くの糖質を吸収できるというわけです。
具体的には、グルコース単体での吸収限界が約60g/hなのに対し、グルコース+フルクトース(2:1の割合)で摂取すると、最大で90g/hの吸収が可能になります。
この糖質の割合で含まれている飲み物のことを、“デュアルソース飲料”と言います。
これを使う事で、長時間ライトやレースで大きなアドバンテージになります。
これは、長時間ライドやレースで大きなアドバンテージになります。
また、フルクトースは主に肝臓で代謝され、血糖値の安定にも寄与します。
これにより、ライド後半の集中力低下や疲労感の軽減にもつながる可能性があります。
3.糖を摂取するタイミング
ここからは、実際にどのタイミングでどの糖をどう摂るとよいかを見ていきましょう。
ポイントは「吸収スピードと体の状態に合わせて糖の種類を選ぶ」こと。
①ライド前(30〜60分前)
おすすめはマルトデキストリンやパラチノースを中心にしたドリンクやジェル。
胃腸にやさしく、血糖値を急上昇させにくいので、ライドスタートに向けて安定したエネルギー供給が期待できます。
例: スポーツドリンク500ml(マルトデキストリン20〜30g)、グランフォンドウォーター・ジェル
②ライド序盤(〜60分)
筋グリコーゲンがまだ豊富な序盤は、グルコースやマルトデキストリン、パラチノースでシンプルにエネルギー補給。
また、胃に負担もかかりにくいジェルやバナナなどもここで活躍します。
例: グルコースやマルトデキストリン、パラチノースの含まれたジェル(グランフォンドジェルなど)を30分おきに1個ずつとる
③ライド中盤〜ゴール直前まで
このタイミングでは、グルコース+フルクトース(デュアルソース)の組み合わせが真価を発揮。
複数の吸収経路を使ってエネルギー補給の効率を最大化し、ハンガーノックを防ぎます。
例: 1時間あたり グルコース60g + フルクトース30g(=合計90g)→ 「2:1炭水化物比率」のジェルやドリンク(スピードウォーター・ジェルなど)がおすすめ
4.練習でも「補給の練習」をしよう
いくら理論的に優れた補給戦略でも、実際に自分の体で試してみないと本番ではうまく使えません。
特にフルクトースは人によって消化不良を起こすことがあるため、ロングライドやレースに向けては事前の「補給のトレーニング」が不可欠です。
徐々に糖質摂取量を増やしていき、腸を“慣らす”ことで、吸収力を高めることができるという研究もあります(いわゆる「ガストロイントスティナル・トレーニング」)。
5.まとめ
補給の基本は「こまめに、少しずつ、吸収しやすい形で」。
でもその次のステップとして、「糖の種類」まで意識できると、ライド中のエネルギー効率は大きく変わります。
グルコースだけでなく、フルクトースやマルトデキストリンをどう組み合わせて、どのタイミングで摂るか。
これができれば、ハンガーノックに怯えることなく、最後までしっかり踏み続けられる“理想のライド”に一歩近づけるはずです。
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